「じゃあね、菜生」


「うん、またね」



美紗と数人の友達に手を振り、あたしは教室を出た。


美紗は、あたしの様子がおかしいのに気づいている。


むしろ、すでに事情を知っているかもしれない。


だけど無理には聞かず、そっとしてくれていた。


まだ学校内には広まってないみたいだけど、いずれ気づかれるんだろうな……。


ぼーっとそんなことを考えながら昇降口に向かい、靴に履き替えたところで、誰かに挨拶をされた。



「また明日な、菜生」


「じゃあなっ」



顔を見るまでもなく、白鷹だとわかった。


あの日から、どんなに素っ気ない態度をとってもいつも通り接してくるみんな。


でもしつこく絡んでくることはなく、あくまで挨拶程度。


同じクラスであるてったもそうしている。


それがみんなの優しさとわかっているあたしは、そんなことですら泣きそうになる。


……お願いだから、諦めて。


このままだといつか振り向いちゃいそうだよ。


あたしはみんなの言葉を無視して、顔も見ずにその場を去った。