*Only Princess*





空気の悪い沈黙があたしたちを包む。


こんなに怒ったてったを見るのは初めてで、戸惑うと共にショックだった。


いつもクールなてったが取り乱すなんて、あたし相当悪いことしちゃったんだ。


謝らなきゃ。



「あの、てった……」


「……悪い、取り乱した」



そんな、てったが謝らないでよ。


悪いのはあたしなのに。


すると、てったはくるりと身を翻してバイクが置いてある場所に向かった。



「菜生、今日は誰かに送ってもらえ。俺は頭を冷やすから。……悪いな」


「てった……」



そのままエンジンをふかせて去っていくてった。


あたしは呆然と立ち尽くしているだけだった。


今起こったことに頭がついていかない。

……いや、頭では理解しているけど、心がついていかない。


でもだんだんと理解してきて、目頭が熱くなった。



「どうしよ……てった怒らせちゃった……っ」



涙が滲んで、視界がぼやける。


それでもあたしに非があるから、涙は零さないように努めた。