「……ろよ」
「え?」
てったの声で、思わず振り返ってしまった。
だけど聞こえなくて、しかも俯いていて表情がわからない。
と思ったらてったはバッと顔を上げて。
「いい加減にしろよ!」
ビクッと肩を震わす。
てったの怒り声に驚いたのはあたしだけじゃなかった。
「お前、もっと危機感を持てよ! お前が思ってるほどこの世界は甘くねーんだよ! 俺らがどんだけ心配して探したと思ってんだよ……!」
てったの剣幕に負けてしまい、喉がキュッと締まり声が出なかった。
「幸い、朱雀が悪徳な族じゃねーからよかったものの、ガラの悪い族だったらどーしてんだ。強く言えないのかもしんねーけど、白鷹を選ぶんだったらもっとはっきり拒絶しろよ!」
悲痛な声に、胸が苦しくなった。
あたし、こんなにてったを不安にさせていたんだ。
「菜生のためだったら、いくらでも戦う覚悟だってのに……それなのに、」
「てった、少し落ち着こうか」
琉依がそう言ってくれて、てったの言葉は止まった。
