水族館を出たときには空はオレンジ色に染まっていて、夕方になっていた。
「何か進展はあった?」
ホテルに帰る途中、美紗が尋ねてきた。
進展という進展は……。
「う~ん……手は繋いだよ」
「わぁお!」
まあ、あたしが握ったんだけども。
「そーゆー美紗は、なんかあった?」
「え? う、うーん」
あたしが手を繋いだだけでドキドキキュンキュンしてるときに、美紗はもっとすごいことしてたんだろうね!!
ほ、ほら……き、キスとかさ?
ふん、いいよね! すでにカップルの美紗は!
……とまあ、美紗への嫉妬は心に閉まっておいて。
「ドキドキするけど、不安でいっぱいなんだよね。てったに好きな人や彼女ができたらって」
「……そんな不安になることないと思うけどな……」
「ん? なんか言った?」
「……ううん!」
美紗が小さく呟いた声は聞こえなかった。
