「俺の家、こんな感じだから成績はもちろん、たくさんの習い事、礼儀作法とかも厳しくて。小さい頃から息が苦しかったんだよ。
忙しくて誰とも遊べない。友達といえば、航平くらいしかいなかった」
そう、なんだ……。
やっぱり息の詰まる生活をしていたんだね。
「母さんは俺が小さいときに亡くなって記憶にないし、ただ1人の家族の父さんは、世間体しか気にしない。厳しくて、愛情なんてもらったことなんて、きっとないよ」
「そんなこと……」
愛情をもらったことがないなんて、そんなことない！……とは言えなかった。
愛情を感じていたら、琉依はこんな風に思い詰めたりしない。
「中学生になって、逃げ出したんだ。家から、父さんから。白鷹に入って、家にも帰らない生活で……そんな俺に、航平はついてきてくれた」
航平の話が出てきて、少し顔の筋肉が緩んだ。
もうそれだけでわかるよ。
琉依は航平のことが大好きで、大切な存在ということが。
「俺が髪を赤茶に染めたら、航平はアッシュグレーに染めて。俺が1人暮らしするって言ったら、僕もって。まあ、それはさすがに止めたけど。
航平の家は、上手くいってないわけじゃないのにさ」
