「美紗は、蛇王のスパイなんだよ」
────世界は残酷だ。
こんなことになるなんて、誰が想像しただろう。
どうして親友が敵対する暴走族のスパイなのか。
こんな残酷なこと、望んでいない。
あたしはただ、白鷹のみんなとキラキラ輝いていたかった。
たくさんふざけて、たくさん笑い合って。
そんなありきたりな日々を送りたかった。
そう思うのは美紗も同じ。
美紗とも、そんな風に過ごしたかった。
ううん、今までそうやって過ごしてきたの。
それなのになんでこんなことになってるの……?
「美紗は今まで他の暴走族の情報はもちろん、お前らの情報も集めてくれてな。"高村 菜生"って名前を教えてくれたのも美紗だ」
え……ウソでしょ?
頭をガンッと殴られたような衝撃。
聞きたいのに、喉をグッと掴まれたように声が出てこない。
でも、なんとか声を振り絞る。
