「どうしたの?」
まるで何かふしぎなことがあるみたいに陸は声を漏らした。
陸を見れば、視線が交わる。

いや、別にたいしたことじゃないんだけどさ、と前置いた上で陸は苦笑した。

「なんかこうやって花火を見るの初めてじゃないような気がしてさ」

ドォンと。
一際大きな音がした。

今まで一度も花火から視線を外さなかった莉子ちゃんが振りむく。

ドォンと、もう一発。

「そりゃあ花火を見る事だって普通にあるでしょ」

パチパチパチ、と火花が散る。

「そうじゃなくてさ、こうやって、莉子と見るのがって…そんなわけないんだけどさ」

クライマックスも近いのだろう、断続的に花火が散る。
大きな光が莉子ちゃんの横顔照らした。

「…莉子ちゃん?」

声を、かけずにはいられなかった。
先ほどとは違う。

莉子ちゃんは大きく目を見開いた。
その唇は震えているようにも思えた。

が、次の瞬間には何かの痛みに耐えるように顔をしかめて、そして小さく
その唇は「うそだ」と確かにつむいだのだった。