「あ、ほらそろそろだぜ」
彼女の所作に見惚れていれば、陸がほらとグラウンド側を指差す。
下では花火を打ち上げるまでのカウントダウンが始まった。
5・4・3・2
カウントダウン間際、
莉子ちゃんの横顔が見える。
そして、それがなぜだか懐かしく思えた瞬間、
1、と大きな声とともにドォンと低い音が響いた。
花火独特のにおいと、はじけるような音ともに光が落ちてくる。
「…綺麗」
ほうっと小さくもらす莉子ちゃんは花火をずっと見つめている。
花火は一度だけでなくあと何発が上がるようだった。
パチパチパチと空に花が咲いていく。
歓声と、拍手と、
「んー」
陸の声と。