「あれ、莉子ちゃん?」
不意に声をかけられ、振り返れば今日も今日とてその王子様スマイルを浮かべる葵が立っていた。
「あれ、やっと解放されたんですか?」
さっきあった紘の発言からしてまだもう少し解放されなさそうだったのに。
そんなことを思いながら聞けば、葵は苦笑する。
「やっとね。その様子じゃ紘と入れ違いになったみたいだね」
「まあそんな感じですね。みんな忙しいようで」
公演が終わったからといって龍は案の定囲まれ、もみくちゃにされて出てこれないようだったし、紘はシフトだといって行ってしまったし、顔がいいというのも存外大変なのだろう。
「そっか。じゃあ俺と回ってくれないかな?もう今日はシフトも入ってないし、これから自由だしね」