****

「綺麗だと思う、俺は好きだ、その髪」

いつか彼が言った言葉を不意に思い出した。
何気ないその声が今や私を繋ぐものではなく、彼女のものだと思うとほんの少し笑えてしまう。

それを知らない彼も。
ただ、躍らせる彼女も。

誰も彼も。

「こんな終わり認めない!」

そう叫んだ彼も。

誰も報われない物語に意味などあるのか。
徐に振り返り、頰を緩めた。

「私は、間違ってるのかな」

聞こえているはずのない彼に向けて小さく呟いた、