一人残された空間で、さっきの鈴の音が反響している。

柄にもなく今自分の表情はあほな顔をしているに違いない。

ほんの少し、脈が速いのは気のせいに違いない。
ほんの少し、口角が上がりそうだったのは気のせいに違いない。

気のせいでしかあっていけない。

思わず、乾いた笑いがこぼれる。
言葉にしてはいけない感情にそっと蓋をして、立ち上がった。

「本当、俺も馬鹿だなぁ」

そんな、小さく嘆いた声は静かな店内にそっと溶けていった。