「行けないに決まってんでしょ。今更、どのつらさげて会いに行けるの?それにこっちに来ている間にあんまり人に会いたくないし、今日ももう千景に会ったら帰る予定だし」
ほんの少し頬を膨らませる彼女に思わず笑ってしまう。
「はいはい、とりあえず帰る前にはその口調直しときなね」
そういえば、彼女は「わかってる」と一言いい立ち上がった。
「もう帰んの?」
「うるさい、帰りますー」
「てか、本当に何しに来たわけ?」
そうあきれながらいうも、彼女は手を止めることなく帰り支度をする。
そして、つかつかと出口まで歩いていき、やっと振り返った。
「だから言ったでしょ?千景に会いに来たって。本当、それだけだよ」
そして、最後に意地悪気に微笑み扉を開けて行った。


