あの日の桜はⅢ【大幅修正中】


「何読んでるんですか?」


箱から取り出したチョコレートケーキを皿に移し、ソファに腰掛ける。

千景と対面になるように座れば、千景は口元を緩めた。

「気になる?」

「そりゃあ、千景が本を読んでるって珍しくないですか?葵とかならわかるんですけど」

表紙を見ようとするも、ご丁寧にブックカバーに覆われていて確認できない。


「まぁ、そっか。これはね、文化祭と出し物の資料なんだよね」

「文化祭の?」

「そーそー。俺、用事で文化祭の日はいけないからさ脚本担当で協力しよーかとね」


口の中で甘いチョコレートが溶けていく。

「文化祭に来れないほどの用事なのですか」

思わず口からそんな言葉がでると、千景はまたニヤリと笑う。


「俺がいなくてさみしーの?」

「まさか。悪魔が一匹いなくて清々しく文化祭を過ごせそうです」

同じように笑みを零せば千景はつれないなーと苦笑する。

「俺は莉子と文化祭過ごせなくてさみしーけどねぇ」

「冗談はいいですから!ていうか、どんな用事なんですか?」

気がつけばそんなことを言っていて、しまったと後悔する。

「…知りたい?」

そう聞く、千景の表情はさきほどのくだけた笑みとは違い、真剣な目をしている。

ほんの少しだけ目をそらしてしまう。