「何読んでるんですか?」
箱から取り出したチョコレートケーキを皿に移し、ソファに腰掛ける。
千景と対面になるように座れば、千景は口元を緩めた。
「気になる?」
「そりゃあ、千景が本を読んでるって珍しくないですか?葵とかならわかるんですけど」
表紙を見ようとするも、ご丁寧にブックカバーに覆われていて確認できない。
「まぁ、そっか。これはね、文化祭と出し物の資料なんだよね」
「文化祭の?」
「そーそー。俺、用事で文化祭の日はいけないからさ脚本担当で協力しよーかとね」
口の中で甘いチョコレートが溶けていく。
「文化祭に来れないほどの用事なのですか」
思わず口からそんな言葉がでると、千景はまたニヤリと笑う。
「俺がいなくてさみしーの?」
「まさか。悪魔が一匹いなくて清々しく文化祭を過ごせそうです」
同じように笑みを零せば千景はつれないなーと苦笑する。
「俺は莉子と文化祭過ごせなくてさみしーけどねぇ」
「冗談はいいですから!ていうか、どんな用事なんですか?」
気がつけばそんなことを言っていて、しまったと後悔する。
「…知りたい?」
そう聞く、千景の表情はさきほどのくだけた笑みとは違い、真剣な目をしている。
ほんの少しだけ目をそらしてしまう。


