大きな声に私はびくりと肩を揺らした。 葵の手から傘が落ちた。 「なんで、こんな時まで取り繕おうとするの?」 木の下と言えども雨は通す。 その雨が葵をどんどん濡らしてく。 いつか、ずぶぬれになりながら一緒に走ったことを思いだした。 私は、その質問に答えられなかった。 「なんでそんなに”泣くのをこらえるの”?」 今度は私が目を見開く番だった。