スマホの電源をつけると、母と祖母からの着信履歴が並んでいた。
俺は先生に車で送ってもらい、病院へ向かった。
薄暗い病院の廊下は、冷たくて血が通っていないもののように感じた。
廊下のソファーに座っている母と祖母は、表情を失っていた。
「あのさ。どういうこと?」
「…………」
「…………」
俺が声をかけても、何も返ってこない。
2人とも顔が青ざめている。
親父が大変な状態であることが分かった。
その奥には、会社の部下らしきスーツの姿の男性もいた。
「柳井さん、時々頭をおさえる仕草をしていて……。病院行ったらどうですかと伝えても、全然聞いてくれなくて。もっと強く言っておけばよかったです……本当に申し訳ございません……」
そう言って、若いサラリーマンは泣いていた。
手術は長時間に及ぶらしい。
しばらく入院になることも確定らしい。
母と祖母はいったん家に帰り、着替えやタオルをまとめてくることになった。