緊張感がゆるまった教室で、ユージや駿介とだべっていた時。



「柳井! ちょっと来い!」



突然、担任に呼び出された。


廊下を走ってきたらしく、必死の形相、声を向けられた。



まさかテストの出来がよすぎた俺にカンニング疑惑発覚!?



……ではなかった。



「なんすか」


「お前、携帯は?」


「電源切ってますよ。校則でしょ」


「……お父さんが倒れた」



「…………は?」



倒れた……!? 親父が……!?



その言葉を飲み込むことができない。


ざわついている廊下で、1人立ち尽くしたまま。



「おい、柳井!」



先生からの必死な声により俺は我に返った。



「病院まで送るぞ。早く準備しろ」


「あ、はい……」



鼓動が早くなり、喉の奥が乾く。



これは夢じゃないのか? と思う反面。



常に目の前に立ちはばかっていた壁と、


自分の心に亀裂が入ったような気持ちになった。