顔をそむけ、俺はペダルを踏み込んだ。



アリサもチャリを漕ぎ、俺の隣まで追いついてきた。


ヘルメットはカゴに入れたまま。かぶれよ、校則守れよ。



「あたし、のぞむくんのことフっちゃった。かなり悲しそうな顔してたよ。もしかして本気であたしのこと好きだったのかなぁ」


「……………」


「ねー良ちゃん聞いてるー?」


「聞いてるけど」



口を尖らせる彼女を見ながら、そう伝えた。



風になびく髪の毛からだろうか。


甘い香りが鼻をかすめたせいで、俺は再び前を向いた。



「話したいことって、それ?」



なんでいちいち報告してくんの? と言いそうになったが、ぐっとこらえた。



腫れぼったいまぶたから察するに、


昨日、一人で泣いてたのだろうか。