「なんで泣いてんだよ」
「行くなよとか言わないでよバカ! そりゃあたしだって怖いよ、寂しいよ! 良ちゃんの近くにいれなくなるから。でも行くの。決めたんだもん!」
むちのような彼女の黒髪にビンタされかと思えば。
手にしていた紙袋で俺をバシバシ叩いてくる。お前それ分厚い大学案内入ってるやつだろ! マジでいてぇーよ!
「分かった、分かったよ!!」
「え……っ?」
荒げた俺の声に反応するように、アリサが一瞬だけうろたえた。
その隙を逃さず、彼女をぎゅっと抱きしめた。
紙袋がアスファルトに落ちる音がした。
「……ずっと追いかけ続けてやるから、お前はお前のしたいようにしろよ。悩んだ時とか苦しい時は頼ってくれていいから」
感情があふれ出さないよう、低めのトーンで伝えた。
びくりと彼女の体が反応する。
どきっと俺の心臓も震えた。
しかし――
「どうして肝心なことは言ってくれないの!? 本当クソガキのままだね! だから彼女できないんだよ、このヘタレ天パ野郎!」
なおも彼女は抵抗をやめなかった。
抱きしめられながらもゴスゴスと俺の脇腹を殴ってくる。
暴言まで吐かれ、さすがに俺もプチンと来た。