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隣に座っているアリサは眠ってしまったため、
新幹線の分厚い窓越しに、せわしなく移り変わる景色を眺めていた。
猛スピードで流れていく家や建物の奥に、薄暗い田園風景が見えた時。
トンネルに入り、ごおっという音とともに視界が黒でさえぎられた。
こくりこくり船をこぐアリサの姿が窓に映し出される。
「ん……」
起こさないよう気をつけながら、彼女の頭を自分の肩に引き寄せた。
彼女は俺の肩に体重をかけ、すやすやと眠り続けている。
その重みが、温もりとなって体に溶け込んでいく。
ねじれたり、絡まったりしていた気持ちが、次々とほどけていく。
昨日、こいつが東京に行くと知った時はびっくりしたけど、
強い目でそう言い切った彼女は、改めて簡単には超えられない存在だと思った。
高校受験に失敗したせいで、今、中途半端なレベルの高校にいる俺。
本当はアリサと同じ高校に行くつもりだった。
だけど、親父が死んでから勉強に身が入らず、見事に落ちてしまった。
高1の終わり、それなりの成績だった俺は進学クラスに行くことを決めた。
次こそはアリサと同じところに行けると思っていた。なのに。
またこいつは俺の先を行こうとしている。

