「……プリクラみたいに加工されたやつより、実物の方がいい」
「えっ?」
「てか、見すぎ。人いっぱいなのに恥ずかしい」
「大丈夫だよ。ここだったら知ってる人いないじゃん」
そうつぶやき、アリサは更に俺に近づいてきた。
再びその体を引き寄せたくなったが、道ばたなので我慢した。
彼女はつながっていない方の手で、スマホをななめ上に掲げた。
画面に写っているのは、まるで恋人同士のような2人――俺とアリサ。
電子音が鳴るとともに時間が切り取られる。
人混みや街並みはすべてピンボケになっていて。
大都会なのにここがふたりきりの空間みたいだ。
やっと一緒に撮れたね、という声も自然と心に落ちてきた。
そのまま2人で1つの画面を眺めていたが、
誰かの肩がとんと当たり、一気に現実に戻されてしまった。
んーやっぱ東京、人多すぎるわ!
「なんで、わざわざこんなとこ来ようと思うの?」
「知らない人ばかりのとこで、新しい生活にチャレンジしたいからだよ」
アリサはそう答えた後、俺の手を引っぱり人と人の間をすり抜けていった。

