「びっくりした、良ちゃんが指輪って。でもありがとうー。すごい嬉しい~!」
「チェーンか皮ひもで首から下げようかなって」
「え、指にはつけないの!?」
アリサは左右の店の並びを楽しそうに見ているものの、手を離さずに俺の隣にいた。
一応はヒールを履いている彼女の歩調に合わせてやってはいる。
ふと空を見上げると、ただでさえ薄い水色の空がさらに色を失っていた。
くいっと手を引かれ、ん? とアリサの方を向いた。
「良ちゃん、最後にプリ撮らない?」
「時間やばいでしょ」
「えーいいじゃん。撮ろうよぉ~」
うじゃうじゃ人が止まったり流れている中、彼女はじーっと上目遣いで俺を見つめてきた。
吸い込まれるような大きな瞳が俺を攻めてくる。
甘え度100%のその表情に、ぐっと喉が詰まる感覚がした。
「……そういう顔とか、ずるい」
「あははっ。だって、こうやったらわがまま聞いてくれるでしょ」
今までもいろんな男にこのスキルを使ってきたんだろうな。
わかる。わかるよ。さすがの俺でも言うこと聞いてやりたくなるよ。
しかーし、ここは意地とプライドにかけて、俺も曲げない!
「他の男と一緒にしないでくんない?」
「へぇ~顔赤くしてるくせに無理しちゃって。あはは、かわいい~!」
「…………」
やっぱコイツムカつく!!
主導権を握ろうとしても、するりと上から目線で俺をバカにしてくる。
でも、それで良かった。
誰かに流されている時よりも、自分のやりたいようにしているアリサの方が魅力的だから。

