俺も軽くぶつかり返してやると、ヒールの音を鳴らしアリサはよろけた。
近くの人にぶつからないよう、急いで手を引き、バランスをとらせた。
「ちょ。お前、体幹弱っ」
何バカップルみたいなことしてるんだろう、と思いつつも、
自然と俺は笑っていた。
「そっちこそ、今の何? もはやタックルだよ。ありえなーい」
アリサはキッと俺をにらんでくる。
俺は絡めていた指をすっと抜き、後ろから彼女の肩に手を回した。
離れていかないよう、自分の肩にアリサを固定させる。
べたべたしているカップルが多いこの場所。
今の俺の行動ははたから見ても不自然ではない。
アリサもまた、俺の肩に頭をあずけていた。
甘い香りに胸がしめつけられ、切なさに心が揺さぶられた。
この時間が終わってほしくない。
今さら気づいたところで、もう遅いのに。
幼い頃からずっとこいつと一緒だった。
言い合いやケンカもしたし、お互いがボロボロだった時に支え合ったりもした。
抱きしめたことも、抱きしめられたこともあるし、ついでにキスまでしたこともある。
だけど、どうして今、こんなにも恋人みたいなことをしたくなっているんだろう。
そして、どうして今、アリサと一緒にいるのがこんなに楽しいんだろう。
普段と違う場所に2人きりでいるから、だけではない。
俺はアリサとずっとこういう日々を過ごしたかったんだ。

