彼女も手をぎゅっと強く握り、俺を見上げた。
意味ありげな表情、視線を俺に向けてくる。
勘違いかもしれない。でも、顔が赤くなっていてもここならばれない。
俺も吸い込まれるようにアリサを見つめ続けた。
「じゃあ何で彼氏いろいろ作ってきたの?」
「好きって言われたら嬉しくて。あたしも好きかも、って思うことあるし」
「うわ、気持ちブレすぎ。で、結局すぐ別れるんじゃん」
「うるさいな。彼女できたことない人に言われたくなーい」
いちいちうるせーのはお前だよ、と思いながらも、
つないだ手を意識すると、温かさが、幸せ、みたいなものとして、体に巡っていった。
「その好きな人が、東京行くなって言ったら?」
「ちょっと迷うかも」
「やっぱブレるんじゃん」
握っている手をゆるめ、細い指の隙間に自分の指をすべらせた。
すると、アリサは指をからめたまま、肩に体を寄せてきた。
「大丈夫だよ。そういうこと言う人じゃないから」
水槽の壁にぶつかる魚のように、こつんこつんとくっついたり離れたりを繰り返す。
もどかしい気持ちが胸に込み上げてくる。
こいつのことを動揺させたくて仕方がない。

