次に、赤や青に照らされるクラゲの水槽トンネルを進んだ。
半透明の無数のクラゲたちが、視界いっぱいに飛び込んでくる。
「すげーな。これ」
クラゲは海で刺されたことがあるせいで苦手だが、ここでは人の手によって幻想的に彩られていた。
「良ちゃんも早く彼女作ればいいのに。こういうとこに連れてきてあげると絶対喜ばれるよ」
「彼女、できねーもん」
「でもさー前にバイトの後輩に告られたんでしょ? 意外と良ちゃんモテるって噂聞いたことあるよ。チャンス逃しまくってたら本当にモテない人になるよ」
「うるせーな。お前だって今いないじゃん」
「そうだね。1年以上いないの、久しぶりかも」
ゆっくりと人が流れていくトンネル内で、手をつないだままクラゲの近くへと向かう。
つながれた手が、青色の光につつまれた。
そういえば、アリサとデート的なことをするの、初めてかもしれない。
改めてそう思うと、普段は言えないようなことも口に出せるような気がした。
「……今はいないの? 好きな人」
「いるよ」
青から赤に光が変わり、縮んでは伸びる白色がいっせいにピンクに染まった。
まさかそんなストレートな答えが来るとは思わず、手を握りづつけることしかできない。
「たぶん、ずっといるよ。近くに」

