人がいっぱいで騒がしいため、会話は聞こえてこないが、
男子たちはアリサにデレデレと話しかけている。
アリサもそれに笑顔で応えている。
「ちっ」
なぜか複雑な気持ちになった。
お前ら大学を見に来たんだろ? オープンキャンパスでナンパしてんじゃねーよ!
アリサもアリサだ。なに簡単にモテ女子系笑顔ふりまいてんだよ!
本当に都会で変なヤツに引っかかって、ちゃらいサークルに勧誘されて飲まされて危ないことになるんじゃねーの?
アリサは俺の姿に気がついたようで。
ニコニコと男子たちに手を振り、俺のもとへ戻ってきた。
「あ、良ちゃん。いたいた」
まわりからの視線を引き連れたまま、俺に近づいてくるアリサ。
地元のせまい町じゃなくても、彼女はやっぱり目立つ。可愛い。
くそ。こいつのルックスは全国区なのか?
「何? ナンパされてたの?」
「違うよー。同じ学科志望の子いたから、ライン交換しただけ」
「ふーん」
「あれ、怒ってる? しかも駅そっちじゃないよ」
「え?」
アリサを置いてスタスタ歩き始めたものの、都会に慣れない俺は道を間違えていたらしい。マジだせぇ。

