アリサは寝転がったまま俺に視線をよこしてくる。
鎖骨が見えるゆるめTシャツに、花柄の短めハーパン。
少し短くなった髪の毛が、さらりとシーツの上に広がり、
LEDに変えた天井のライトが、彼女の脚をまぶしく光らせる。
なんでそんな無防備な姿を見せるんだよ! 無駄にどきどきするわ!
「良ちゃんも進学だよね?」
「まあ一応」
「その割に、バイトとか遊びばっかりで勉強してなくない? 昔より全然頑張ってないじゃん。そんなんで大丈夫?」
「……親父みたいなこと言うなよ」
「まあ、まだ現実味ないか。しょうがないよね」
アリサは自分の髪を一束、指にからめてつぶやく。
自分に言い聞かせるような口調で。
「…………」
悔しいけど、進路に関して俺がどーのこーの口出しできる立場ではない。
俺とアリサはただの『幼なじみ』の関係だし、
俺自身がまだ自分の進路のことをリアルに考えられていないから。
しかも、今のアリサは俺が意見を言っても、
いつもみたいに考えをブレさせないように見える。
自分の意志を貫こうとするアリサは、嫌いではない。
だけど――
なんだろう、腹が減っている時に水しか飲んでいないような。
頭では分かっているのに、それ以外がついてこないような。この感覚は。
「……ねぇ、良ちゃん」
アリサの甘えるような声とベッドが揺れる音が同時に鳴り、俺は顔を上げた。
え? と驚く間もなく、アリサは俺の腕を引きこう言った。
「明日、あたしと一緒に東京行こ?」
――はい? TOKYO!?

