「ただい、ま……」
やけに疲れた今日のバイトを終え、家に帰り玄関ドアを開けると。
リビングからキャッキャとした声が響いてきた。
「あんれぇ、アリサちゃんおっぱいふくらんだかぁー?」
「えへへ。そうなんです。裕子さんのとこの健康バナナ豆乳のおかげですよぉ」
「本当? 実は新商品もあるのよー。今度持ってくね」
つるーっと廊下で足をすべらせそうになる。
おいおかん! アリサの家にも商品を売りつけてんじゃねー!
(母の職業:乳飲料の営業レディ)
かくいう俺も、毎日カルシウムたっぷりヨーグルトを飲んでいるおかげか、高2になっても背は伸びている。
あと5センチで夢の180cm代! まだ止まるな俺の身長!
そろそろリビングに入ろうと思い、どすどすと廊下を進んだが。
「でもアリサちゃんただでさえ可愛いのに、これ以上胸も大きくなったら、東京で変な男がどんどん寄ってきちゃうよー」
「ばーちゃんも心配だぁ。東京で成金経営者だのスポーツ選手だの変なミュージシャンだのに誘惑されて、『深夜に熱愛♡密会!お相手は美人女子大生』みたいに週刊誌のえじきにされるかもしれないぞぉ。男と付き合う時はまんず相手が結婚してないか確認だぁ!」
「あはは~何言ってるんですか。考えすぎですって~! ……あ」
「…………」
リビングのドアを開けて、すぐ、足が止まった。

