「じゃあ、今好きな人はいんの?」
「ここで話すことじゃないでしょ。仕事中だし」
小声でそう答え、食材の在庫チェックに行こうとしたが。
「いーじゃん。あたしのこと振ったんだからそれくらい教えてよー」
と後ろをつけられてしまう。
「ねーその幼なじみのこと好きなの? あたしも見たことあるけど、やばいくらい美人だよねー」
「まあ、可愛いっちゃ可愛いけど」
「好きなんだー好きなんだー!」
コイツ、マジうるせー! 奥の客席にまで聞こえるぞ。
仕方ない。教育係として注意くらいしとくか。
「あのさ、一応、奥にお客さんいるんだから、静かにしてくれる?」
「ふぁーい」
「あと。俺には別にいいけど、他の先輩には敬語使いなよ」
そう続けると、後輩ちゃんは一歩近づいてきた。
視線を落としながら、俺のエプロンをきゅっとつかんでくる。
「俺には別にいいけど、って言い方、むかつく」
「え?」
「良一さんのこと……好きでいても、いいですよね?」
さすがに心臓がドキーンとしてしまった。

