俺に彼女ができないのはお前のせいだ!




深呼吸をしながら座り直し、背もたれに体重をかけた。


ソファーにだらりと手を置くと、アリサの手の甲とぶつかった。



番号を呼ばれて誰かが立ち上がる。しばらくするとそこに誰かが座る。



混みあっているし、待ち時間も長そうだけど、


親父ももっと早くここに来れば、運命は変わっていたのだろうか。



アリサと手は軽く触れ合ったまま。


離すことができなかったし、彼女も遠ざけようとはしなかった。



「……ばーちゃん、本当にただの風邪かもしんないけど」


「うん」


「変に心配なって」


「うん」


「付き合わせてごめん。もうすぐしたら母さんも来るから」



ぐるぐると思考が巡りそうになったけど、手に当たるかすかな温もりを意識すると冷静さを保つことができた。



「びっくりしたよ。突然、救急車呼んでとか言うんだもん」



アリサはそう言って、こつんと手をぶつけてきた。



「でも……、良ちゃんがすごい必死で、力にならなきゃって、思った」



言葉を選んでいるのか、言いたいことがまとまっていないのか。


彼女は床に置いたローファーに向かって、とぎれとぎれに言葉を発した。



「まあ、何があるかわかんないじゃん。突然ぽっくり逝くかもしれないし」


「もう。縁起でもないこと言わないの」


「縁起でもないこと、実際、起きたから」



俺がぼそりとそう口にすると、アリサはびくりと手を遠ざけ、


「……ごめん」


と、か細い声で謝ってきた。



「や、謝る必要ないから。それより電話、何の用だったの?」


「今言うことじゃない。また今度」


「は?」



今時間あるんだからさっさと言えよ、と言葉がこぼれそうになったけど。



「良一~! お義母さんは? 大丈夫なのー!?」



あわあわと母がこっちへ向かってきた姿が見えたため、やめておいた。