夕方の病院内は、会計待ちの人と駆け込みで入ってきた人でがやがやしていた。
ここに来ると昨日のことのように思い出す。
『お前なら、裕子と母さんのこと、支えること、できる。だから……よろしくな』
親父とかわした最後の会話を。
診察室までついていくと祖母に伝えたが、
年寄り扱いの次は子ども扱いかー! と怒られたため、広いロビーでアリサと待つことにした。
固めのソファーに腰をかける。
なんとか祖母を医者のもとに送り届けることはできたが、結果を聞くまでは気が抜けない。
無邪気にはしゃいでいる子どもたちが目に入り、なぜかイラっとした。
「良ちゃん……顔、怖いよ。飲み物でもいる?」
隣から聞こえたのは、心配そうなアリサの声。
「ん、大丈夫」
「……あたし、どこか別のとこ行ってよっか」
何番の方、いらっしゃいますかー? お大事になさいませー、という声が行き交う中。
アリサの言葉は、それらと混ざり合わずに妙な響きを持っていた。
「何で?」
と、身を乗り出して聞き返す。
「こういう時、良ちゃん1人でいたいでしょ」
正面を向いたまま、アリサはぼそりと答えた。
さっきはしゃいでいた子どもたちは、親らしき大人に注意をされてしゅんとしている。
俺は一度まぶたをぎゅっと閉じて、心を落ち着かせた。
『そっか。お父さんもだけど、良ちゃんのことも心配だよ。ちゃんと食べてる? ちゃんと寝てる?』
『なんでそんなことお前に言われなきゃいけないの』
あの時と、今は違う。
俺だって自分のことだけで精一杯な子どもじゃない。
突っぱねて逃げることは簡単だ。
でも、気持ちが不安定な時にそばにいてくれることは、単純に嬉しい。
「ここいてよ。その方が安心する」
横目でアリサを見ながら伝えると、彼女は唇をかみしめながらうなずいた。

