「食欲、ないの? 薬くらい飲めない?」
「なーに。寝てれば治るべ」
「咳もひどいじゃん」
「長年生きてるからね。自分の体くらい自分で分かるもんだぁ」
「…………」
祖母の言葉に違和感を覚えるとともに、
一気に不安な気持ちが込み上げた。
――『柳井さん、時々頭をおさえる仕草をしていて……。病院行ったらどうですかと伝えても、全然聞いてくれなくて』
親父が倒れた時のことを思い出したから。
風邪は万病のもとって言うくらいだ。
もう年も年だし、別の病気にかかってる可能性もあるんじゃないか?
緊張感が体に走っていき、背中に冷や汗がじわりとにじんだ。
祖母はそんな俺に気づかず、
「心配かけて悪いなぁ。ひと眠りするわ」と言い、ごろりと寝返りを打った。
おい。なんでそんなのんびりしてんだよ。
自分の体は自分が一番よく分かるって……んなわけないだろ。
正確に把握できるのは医者だろうが。
「……親子そろって病院嫌いかよ。ふざけんな」
思わず、そうつぶやいた時、
カバンから、ブー、ブー、とスマホの振動音がして、我に返った。
見ると、アリサからの着信。
すぐに通話をタップした。
『良ちゃん、今日何時ごろ帰……』
「アリサ、救急車呼んで!」
『ええっ? 何!? どうしたの!?』
アリサが驚いている間に、
「ちょ……こんのバカ! ただの風邪つってっぺ? 税金の無駄遣いするな! ゲホッ、ゲホッ!」
と、苦しそうに祖母が止めに入ってきたため、
「ばーちゃん具合悪くて。タクシー呼んでくれる?」と訂正しておいた。

