「え……?」
聞こえたのは、あっけにとられたようなアリサの声。
やべ、拒否られたと思われた?
違う! 突っぱねたわけじゃないんだ! これは反射だ! 脳じゃなくて脊髄のせいだ!
慌てて「大丈夫だから」とつぶやき、横目でアリサを見る。
あれ、こいつ……いつもと違う。
ロングの黒い髪が、鎖骨くらいまでの長さになっていた。
「……お前、髪切った?」
「うん、ちょっとだけ。良ちゃんのくせによく分かったね」
「その言い方、腹立つわ」
「だって染めた時くらいしか気づいてくれなかったじゃん」
梅雨を運ぶぬるい風が、彼女の髪とスカートをなびかせた。
アリサは自分の髪を指でさらりととかす。
口を尖らせながらも、どことなく嬉しそうな表情で。
その姿に見とれてしまったからかもしれない。
「だいたい気づいてる。言ってなかっただけ」
思ったことが寄り道をせずに、口から吐き出されていた。