少しの沈黙の後、


表情を変えないまま、良ちゃんは答えた。



「彼女、ほしいっちゃほしいけど、作らないだけ。いろいろ忙しいし」


「それ前にも言ってなかった? 見栄はりすぎー。本当はモテないだけじゃないの?」


「……はぁ」



ダルそうにため息を吐かれた後、髪の毛がぐしゃりと乱された。


まあこれくらいじゃメンテナンス済みのあたしの髪はすぐ元に戻りますけど。



ただ、触れられると、この前抱きしめられた温もりがよみがえってしまう。


あの時、良ちゃんも心臓の音が早かった。


かなりドキドキしてたはず。顔見せてくれなかったし。



「あはは~。それ図星ってことじゃん」


「はいはいそうかもしれないですね」


「でも彼女はほしいんだ」


「まあ、そりゃー」



「じゃあ、あたしが良ちゃんの彼女になってあげよっか?」



冗談っぽく伝えたつもりだった。けど。



「……え」



良ちゃんは表情を失い、言葉を詰まらせた。


手もあたしの髪からぱっと離された。