あたしが彼氏と別れた日から、良ちゃんは再び部屋に入れてくれるようになった。
良ちゃんは勉強机の椅子でスマホゲーをしていて、あたしはベッドに腰をかけて。
これ以上、距離が近づくことはないけれど。
「……同じクラスの女子。駿介の誕生日プレゼント選びに付き合っただけ」
良ちゃんはスマホをいじりながら、ぼそりとつぶやいた。
「あ。そうなんだー。へぇー」
なんだ。じゃああの子は駿介くん狙いってことかな。
駿介くん正統派イケメンだし。ファンクラブがあるって噂もあるし。
ほっと安心のため息をつくと、良ちゃんは再び口を開いた。
「そっちこそ男連れだったじゃん。あれ新しい彼氏? お前、男の趣味変わった?」
「え!? 違うよ。参考書選んでもらっただけだよ!」
無意識のうちに、大声を出してしまった。
心の中が悟られないよう、ぎゅっと拳をにぎる。
良ちゃんはスマホからあたしに視線を移し、軽く笑った。
「何でそんな必死なってんの?」
「え……」
「別にいいんじゃん? たまにはあーゆークソ真面目っぽいヤツと付き合っても」
本心なのか、いじわるでそう言っているのか。
後者だと思いたいけど、それはあたしのうぬぼれなのかな。
『どんだけ一緒にいると思ってんだよ! お前はからっぽじゃねーよ』
あたしがボロボロになった時、あんなこと言って抱きしめてきたくせに。
今でもあの時のことを思い出してはドキドキしちゃうのに。
ずるい。悔しい。本当ムカつく。この天パ隠しパーマ野郎。
ずっとあたしが良ちゃんをからかっていた立場だったのに。
あたしが良ちゃんに振り回されている。