「ん?」



気がついたのは、家に向かって自転車をこいでいた時だった。



エナさんに会うのを辞めようと思ったのは、


『死』をネタにお涙頂戴で男を口説いているのでは? という疑惑が出てきたから。



だから。


もしかして死んだ弟発言の真相をもっと早くに知っておけば、


俺はエナさんともっと仲良くなって、あんなことやこんなことができたのではないか? と。



バイト先のロッカールームで飛び込んだ時のやわらかさや、


ホテルの前で、むぎゅっと押し付けられた感触を思い出す。



何カップくらいあるんだろう。エナさん。



……って。


なぜ俺はおっぱいのことばかり思い出してるんだ!?


エナさんの魅力は他にもあるだろうが! 失せろ欲望俺!



はぁ、とため息をつきつつも、


自転車を激こぎして、右手で風をつかみながら帰る俺だった。