休日だからか若者のグループや、カップルが多い駅前通り。
お互い私服のため、俺たちも普通のカップルに見えるようだ。
微妙な緊迫感を持っているはずなのに、俺とエナさんの様子はきっと景色に溶け込んでいる。
「じゃあこっち着いてきてー」
エナさんは熱を帯びた視線を向けた後、
一本細い通りに向かって行った。
体を密着させながら歩く男女と数組すれ違う。
待て待て。ここはラブなホテルが立ち並ぶ通りじゃないっすか?
スマホを奪われたままの俺。エナさんの後ろ姿を追うしかなかった。
「どこ行くんすか?」
「だって、人がいっぱいいたらイチャイチャできないじゃん」
「いちゃいちゃ?」
「良一くん私服だと大人っぽいから大丈夫だよぉ」
「は?」
エナさんが立ち止まったのは、あるホテルの前。
普通のホテルよりも、外観がカラフルで、入口は暗め。
目に入ったのは、休憩いくら、宿泊いくら、などと書かれた看板だった。
「ねぇ。入ろ?」
せくしーな声でそう囁かれた。
ドキーン! と自然と鼓動が高鳴った。
うごごごごと欲望俺が急に脳内の勢力を増していく。
だが、しっかりと冷静俺も頑張っているらしい。
だめだだめだ。負けるな俺。
だって、だって、ここは――
ばーちゃんの勤務先のホテルだぁぁぁ!

