夜の風に吹かれながら、店を出る。
トイレに行っている間にエナさんが会計をすませてくれていた。
「すみません。いくらでしたか?」
「いーよいーよ。付き合ってもらってるのはこっちだし」
いつも通りの軽い口調、笑顔。
その奥にあるのはどんな感情なんだ?
俺は今、まさに『【速報】柳井、今夜、エナられるってよ。』状態なのか?
「じゃあ、今日はありがとうございました」
「…………うん」
まただ。
いつかと同じように、エナさんはふっと表情を曇らせた。
なんとなく目を合わせたくなかったため、スマホで時間を確かめた。
もうすぐ夜8時。家に帰る予定の時間だ。
アリサに『そろそろ帰る』とラインをしようとした時。
「ちょっ!」
突然、スマホを奪われた。
顔を上げると、俺のスマホを片手にして、いたずらそうな笑みを浮かべるエナさんがいた。
「ねぇ。良一くん、もうちょっと一緒にいようよー」
「えーと。エナさん酔ってますか?」
「あははー。ちょっと?」
「……俺、そろそろ帰らなきゃいけないんで。携帯返してください」

