どくん、どくん、と鼓動が早まっている。


髪の毛の束が、ぱらりと彼の頬に落ちた。



こんなに近くで見つめ合っているはずなのに。


良ちゃんがものすごく遠いところにいるように思えた。



ようやく、彼の唇がゆっくりと動いた。



「なんで、抵抗しねーの」


「良ちゃんになら、いいかな、って思ったから」



あたしが変わったことは、

良ちゃんを男の子として見るようになったこと。



「は? 何それ。俺もお前に捨てられる男の1人にされるってこと?」


「ち、違う」


「あっそ。てか勝手に人の部屋入ってこないでくんない? いちいちお前にかまうのめんどくさい」



良ちゃん得意の強がりだって言い聞かせたものの、


1つ1つの言葉が胸に突き刺さった。



あたしはとぼとぼと部屋を出ていくことしかできなかった。




良ちゃんが変わったことは、

女の子としてのあたしを拒むようになったこと。



あたしとの関係が深くなることに、

たぶん、おびえている。