ペットボトルのふたを閉めると、
良ちゃんはあたしの近く――ベッドに腰をかけた。
スプリングがきしむ音と一緒に全身が揺れる。
視線が合わさると同時に、
頬にひんやりした手がやさしく落とされた。
「すげー熱い。これでコンビニ行くとか、どんだけ風邪菌まきちらすつもり?」
良ちゃんの手の甲は、あたしの顔をやさしくなぞっていく。
ほっぺたからこめかみへ。
相変わらず表情も言葉も不愛想。
でも、何となくその向こうにある優しさが伝わってくるよう。
「しょうがいないじゃん。てか良ちゃんもうつっちゃうよ、この部屋風邪菌だらけだし」
「……別にうつされてもいいよ。俺のせいだから」
低く、かすれた声でそうつぶやかれる。
良ちゃんは手を裏返し、
あたしの前髪をとかしながら額に手を当ててきた。
まだその手は冷たさを帯びていた。
雨の中ぎゅっと握りしめた時と同じくらいの温度だ。
頭がぐるぐるしているから、自分の感情がよく分からない。
でも、あの時かわしたキスを思い出してしまって、
早くなった鼓動が中々元に戻らない。
良ちゃんにも風邪、うつしたいなぁ。
一番、効果的な方法で。
そうしたらあたしが逆に看病できるのに。
……なんて。

