「どうして良ちゃんは風邪ひいてないの? あの時だいぶ体冷えたでしょ」
「さぁ。あったかくして寝たからじゃない?」
「そっか。ちゃんと寝れたんだ。良かった。最近、良ちゃんの部屋明かりつきっぱなしだったから」
ベッドから上半身だけを起こして、スポーツドリンクを一口飲む。
喉にほのかな甘みがしみこんでいく感覚が気持ちいい。
「勝手に人の部屋のぞかないでくんない? キモイ」
「あはは。ごめんごめん」
やっぱり可愛いかも。ちょっと顔赤くしてるくせに。
昔から良ちゃんは口が悪くて、本音を言ってくれない。
本当に素直じゃない。
中学に入ったらそういう態度が更に加速していった。
お父さんが倒れた後も、亡くなった時も、感情をぶちまけることができなかったんだと思う。
だから、あの時、雨の中で泣き続けていた姿が、ずっと心に残っていた。

