気がつくと、俺はアリサの体を突き飛ばしていた。


大粒のしずくの中、ピンク色の彼女の傘が宙を舞う。



「つっ……」



アリサは後ろにバランスを崩し、尻もちをついた。



スカートは土にまみれ、

泥水のしずくが白い太ももに水玉模様を描いた。



ストレートの茶色い髪の毛も、水分を含んでいき、ところどころ束になっていく。



傘は少し離れた場所に落ち、容赦なく雨に打ち付けられていた。



彼女は大きな目を見開き、驚いた顔で俺を見上げていた。



はっと我に返った俺は、ごめん、と口にしようとしたが。


急にアリサは起き上がり、俺の制服の胸ぐらをつかんできた。



「……っ!」



息ができなくなる。


思考が急停止する。



アリサが冷たい唇を、俺の唇に押し付けてきたから。



彼女の前髪から落ちたしずくが、重なった唇を濡らした。



どくん、どくん、どくん。



体中の血液が沸騰しそうなほど、鼓動が体に鳴り響いていく。