「濡れるよ」


「いいよ」


「離れろよ」


「ううん」



ざーっと雨の音だけが聞こえる公園で。


アリサの両腕に体が包み込まれた状態。



どうして、こいつに慰められなきゃいけないんだ?


こうやっていつも俺を子ども扱いしてきて。



だけど、どうしてだろう。



雨に打たれたせいで、体は冷えているはずなのに。


お互いの制服も、水を含んで体温すら分からない状態なのに。



心の中に、ぽっと火がともったように、温もりが生じているのは。



ただ――


もう1つのぐつぐつした感情が、俺の中を駆け巡っていった。



いつも俺を子ども扱いして、からかって楽しんでいて、


モテて彼氏もいっぱいいて、かわいくて、


いつも俺の先を行っている女の子が、



こんなにも簡単に俺を追いかけてきて、


強く抱きしめてくるなんて――



「……っ、離せって!」


「キャッ」



ちっとも面白くない。