「……1人にさせて」


「でも、風邪、ひいちゃうよ」



街灯に写し出された影が近づき、1つになる。


アリサが後ろから傘を差しだしてくれているらしい。



「お前こそ濡れるでしょ。早く帰れよ」


「…………」


「帰って」


「いやだよ……」



その声が揺らいでいたせいで、仕方なく俺は振り返った。


片手で傘の柄を持っている彼女は、瞳をうるませていた。



「今、良ちゃんのこと、ほっときたくない」



アリサはそう言って、

いつもよりくるっとなっているはずの、俺の髪の毛に触れてきた。



俺は急いで頭を揺らし抵抗した。


左右にしずくがまき散らされる。



それを浴びながらも、彼女は再び俺に向かって手を伸ばしてきた。



「…………」



俺は傘を片手にしたままのアリサに、抱きしめられていた。


雨にまみれた俺の制服が、彼女のブレザーを湿らせていった。