こんな風に大きな声を出して颯ちゃんを困らせているのが子どもだというのに。
目の前の彼は本当に驚いているのか、ただただ目を見開くばかりだ。
それでも、一度開いた口は塞がらない。
「……わたしは颯ちゃんの彼女なの!」
「……」
「颯ちゃんのことが大好きだから、守られるだけじゃなくて、颯ちゃんのことを守れるようになりたい。お互いがお互いを預け合えるような関係で。
颯ちゃんへの気持ちが抑えつけられるような、ちっぽけな愛情だと思わないで」
「……美鈴」
颯ちゃんは目端を下げてこちらを見つめている。
またわたしは余計なことを言ってしまったと、考えるよりも先にでる言葉に心底嫌気がさした。
「ごめんね、今のは聞かなかったことに───」
わたしが言い終わるよりも早く、彼はわたしの腕を掴み取り自身の方に引き寄せた。
あまりの強引さに体勢を崩したわたしは颯ちゃんの胸の中に寄りかかるように倒れてしまった。

