珍しく、焦りを顕にする颯ちゃん。
こんな颯ちゃんの顔、滅多に見られるものではない。
いつも余裕のある、すました顔をして、わたしの一歩前にいる。
その一歩という距離がわたしにとってどれだけ悔しいか。
詰め寄っても詰め寄っても、距離を取られての繰り返し。
勇気を出して手を伸ばしてみてもさらりと躱されてしまうのだ。
「わたしを汚いものから遠ざけようとしているのは分かってる。
でも……わたしは颯ちゃんとは頼って頼られる、そんな対等な関係でありたい」
「でも美鈴はそんなこと知らなくていいんだ。考えなくていいんだ。
ただ僕の隣で笑ってさえいてくれればそれで、」
「そんな颯ちゃんから守られるばかりは嫌なの!!
わたしはもう子どもじゃないんだよ!!」
あぁもう、何をワガママを言っているのだろうか。

