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「美鈴?」
教室でクラスメートと談笑していると、背後から愛おしいげに呼ばれたわたしの名前。
振り返ると、口角を上げて微笑む颯ちゃんが立っていた。
「三輪先輩!?いや、えっと、これは──」
わたしの横で焦りの混じった声を出し、この場から後退する男子。
「そちらの方は?」
彼を見据えながらこちらに近づく颯ちゃんの表情を伺おうとしても、逆光によって叶わない。
「佐賀昇(さが のぼる)っていいます。小泉とはクラスメートです。
だから本当に何もないっていうか…」
佐賀くんは余程焦っているのか、どんどん窓際まで後退していく。
「あ、そう。僕の名前は──」
「三輪颯太さんですよね。知らない人いないです」
そうなんだ。さすが颯ちゃん。
颯ちゃんの相変わらずのすごさに感嘆の声を出した。

