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小さな影がひとつ伸び上がる空き教室では、少女の安堵のため息が響き渡る。
男がいなくなった今、先ほどの緊張から解き放たれた少女は涙ぐみながらズルズルと項垂れた。
「なにあれ、怖すぎでしょ。美鈴はとんでもない人に溺愛されてるな」
完璧な笑顔は人を惹きつけるかのような魅惑をもっている。
あれはモテるのも仕方ない。
最後に見せた優しい笑顔は少女を堕とすのには簡単で。
鼓動の高鳴りを誤魔化すようにして首を激しく左右に振った少女。
「(あんな人好きになったが最後。後悔するのが目に見えている)」
美鈴に対して羨ましく思うよりも、同情の念を送ってしまうのはまだまだ美鈴が1番だと思っている証拠だろう、と少女は考える。
「ごめんよ、美鈴」
何に対しての謝罪か分からないが、少女は苦笑混じりに吐露した──。

