男は夕焼けに照らされる無人の廊下を足早に歩く。



何度恐怖を与えても、美鈴を守ろうとする少女に男は心の内で少しだけ見直していた。



こいつなら自身が不在の時、美鈴を他の人間から守る駒になるかも___、
と決して美鈴以外を人間扱いしないことを心中考えていた。



美鈴の教室のドアの前に立ち、手を伸ばそうとすると、中から聞こえたのは鈴のなるような笑い声。



愛しい美鈴の笑い声に男は小さく笑みを浮かべた。



しかし笑い声のあとに聞こえた低い声にすぐに口を引き結ぶ男。





「(誰だこいつは。場合によっては…)」





ドアに手をかけて、小さくドアを開くと目の前に広がるのは愛しい姿。



その隣では明らかに好意を含んだ笑顔を浮かべる男子生徒。



湧き上がる殺意を抑えながら、男は優しく声を発した。





「美鈴?」