「どうしたの?顔色悪くない?」
綾香ちゃんを下からのぞき込むと、彼女は恐怖に近いような表情と共になにかを諦めたかのような笑みでわたしの頭を撫でた。
「大丈夫。なんともないよ。ちょっと三輪先輩かりるね」
「うん。……それならいいんだけど」
綾香ちゃんの笑顔が引きつっている気がするのはわたしの気のせいだろうか。
「それじゃあ、美鈴は絶対にここから動かないでね。帰ったりしちゃダメだよ」
「わかってるよ」
苦笑まじりにそう言うと、颯ちゃんはまたわたしの頭部に手を乗せ、笑顔を残して2人は教室を後にした。
静かな空間がこの場を包む。
気づけばこの教室には、わたし1人しか残っていない。

