赤くなる顔を隠すようにして手で覆っていると、いつの間にかわたし達の教室についていた。



中から聞こえてくる人々の騒がしさに、遅刻ギリギリということを物語っている。



四方からとんでくる朝の挨拶に返事をしながら、席につく。



わたしと綾香ちゃんの席は前後だからチャイムがなるまでだったらまだ話していられる。



カバンから教科書をとりだし引き出しに詰めていく。





「そうだったら先輩の言いつけ守らなきゃじゃないの?」





後方から飛んできた声に黙々と動かしていた手を止めた。





「ん?なんのこと?」



「いや、自分以外と話すなって言われてるんでしょ?」



「ううん。そんなことないよ。颯ちゃんの以外と喋るなっていうのは無理だから守らないよ」





にこやかな笑みでそう返すと、綾香ちゃんは大袈裟にプッと吹き出した。